胸骨圧迫の姿勢は「マウンテン・ゴリラ」

現在のガイドラインにおいて重要視されているのは「強く、早く、絶え間ない、有効な胸骨圧迫」です。

 

救命講習会などでも、「AED」が現場に届くまで、いかに有効で質の高い胸骨圧迫を行えるかを最重点に指導を行っていますが、初めて講習を受ける方、特に小学生や高齢者、女性の方には、かなり難しいようで、腕の力だけで圧迫したり、5cm以上押すことができなかったりというケースが多いと思います。


こうした場合、そのほとんどは写真のような「胸骨圧迫時の正しい姿勢」がしっかりとできていないことが原因となっていることから、まず「姿勢」から教えていることが多いと思いますが、これを口頭で見本を見せながら説明するのってなかなか難しいですよね。

 

男女の差はもちろん、体格差や年齢差もあり、すべて同じように説明しても、できる方とできない方がいて、結構、講習時間を割かれてしまうことってよくありますよね?

「う~ん・・・もっと判りやすい方法は無いものか?」と考えていたある日、何気なく見ていたテレビで、マウンテンゴリラの生態が放送されていました。
森の中を、独特の姿勢で歩くマウンテンゴリラが、その歩みを止めた姿を見た時「あれ?これって・・・距骨圧迫の姿勢じゃないか!」と感じました。

 

皆さんも下の動画をよくご覧になって比べてみて下さい。

<胸骨圧迫時の姿勢>

<マウンテンゴリラの姿勢>

どうでしょう?とても、よく似ていませんか?

 

そこで、ある日、小学校高学年から中学生が参加する救命講習会で、このマウンテンゴリラのマネをしてみました。

 

大勢の子供たちの前でやるのは、かなり恥ずかしく、勇気が必要ですが、中途半端にやると講習会そのものが「おふざけ」になってしまいますから、ここは意を決して、家で練習に練習を重ねたマウンテンゴリラのマネを真剣に行いました。

ちょっと歩いて、そのままの姿勢で膝をつくと、ほぼ正しい胸骨圧迫の姿勢になっているという見本を見せました。笑いながら見ていた子供たちも、興味を持ったのか、同じようにやってもらったところ、なんと、ほぼ90%の子供たちが「正しい姿勢」を取ることができていました。

最初は講習会ということで緊張していた雰囲気も、このマウンテンゴリラによって適度に和み、その後の講習会もスムーズに進んで、その効果は抜群でした。

その次は、大人の方を対象にやってみましたが、こちらも、ほぼ70%の方が正しい姿勢になっていました。

ただ、大人になると「照れくさい」ということもあり、こども達より数字が低くなったのかなと思います。

 

その後、胸骨圧迫の姿勢の指導は、すべてマウンテンゴリラでやっていますが、ほぼ同様の効果を上げています。

たとえマウンテンゴリラのマネができなくても、その「動画」を見せたりすることで、正しい姿勢を感覚的に意識して覚えてくれれば、いざというときでも、自然と正しい胸骨圧迫ができるようになると感じています。救命講習会やBLS指導時のご参考として頂ければ幸いです。(HIGE)

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